簡単に申し上げると、国連が現地でどのような支援をしているのか、そして、自分は国連職員として働くことができるのか、を知りたかったことが大きな理由です。
国連に興味を持つきっかけになったのが高校時代の経験です。少し特殊ですが、私の高校にはアフリカ出身の友人がいまして、当時の私は無知かつ勉強不足で、なぜ彼が母国を離れているのか分かりませんでした。彼との交流を通じて、彼の母国で内戦が発生していたこと、海外への亡命を余儀なくされたことを知り、日本という平和な国で育ってきたからこそ、漠然と世界を良くする仕事に就きたいと思うようになりました。そのような活動を行っている組織が無いか調べてみましたところ、国連を知りました。しかし、高校卒業後すぐに国連で働くことは難しく、何か手段は無いか更に調べましたところ、関西学院大学は国連ユースボランティア(UNYV)を派遣しているようでしたので、出願・入学することにいたしました。
ただ、UNYV応募当時は国連で働いてみたいという気持ちだけが先走って、自分が貢献出来る事や国際協力に関する理解が乏しく、1回目の応募では不合格でした。1回目の反省を活かし、2回目の応募ではUNYVを通して何を学び、どのように今後に繋げたいか等、何度も自問自答しつつ、合格後の業務を考え、派遣後に有効活用できるスキルや経験を1年間かけて準備した結果、無事に合格することが出来ました。
業務面については、業務内容は多岐に渡り、広報資料の企画・制作や、イベントの運営支援、記事・投稿の作成等の広報業務だけではなく、カウンターパートや関係者との会議への出席・記録、事務所内のIT関連のトラブルシューティング及び職員へノウハウの移転等も行いました。担当業務もUNDP(国連開発計画)だけではなく、様々な事務所のプロジェクトやイベントに横断的に携わる機会を有り難いことに沢山いただきました。例えば、ルワンダでは当時HIV/AIDSの感染率が諸外国に比べ比較的高く、予防及び検査を促す必要がありましたが、イベント等で使用できる広報資料の種類が限られていました。そのときに、ルワンダのUNAIDS(国連エイズ合同計画)からお声掛けいただきまして、予防啓発動画制作プロジェクトとして、脚本づくりや関係者との意見交換、撮影、編集、納品まで、責任者兼担当者として携わることになりました。結果、無事に動画は完成、イベント等で使用され、多方面から反響があったとの報告を受けました。
生活面については、滞在中、苦労や不便を感じることはありました。例えば、私は国連事務所近くに住んでいましたが、停電や断水は頻繁に起こりましたし、笑い話だと、見知らぬ家の水道料金が我が家に請求されるという、日本では考えられないようなこともありました。そんな環境でしたが、職場にはフレンドリーな方が多く、困ったことを相談できる関係でしたので、滞在中に大きな病気・トラブルは発生せず、心身ともに健康で過ごすことができました。
制作した動画はこちらからご覧いただけます。
1点目は、国連に貢献できる自信を得られたことです。滞在中、ルワンダにおける国連事務所のトップである国連常駐調整官から「(任期について)半年間では無く、もっと長くいてもらうことは出来ないか」とのお言葉をいただきました。話を聞くと、どうやら私の業務を評価してくださっていたようで、それほどの評価に値する成果を挙げられたことが分かりました。学生というフィルターはありますが、アフリカ、そして国連において、自分の能力が通用することを知り、自信につながりました。
2点目は、多様性の難しさを学んだことです。事務所にはルワンダ人だけでは無く、あらゆる国の職員がおり、考え方は人それぞれです。例えば、一つの共通目標があっても、目標達成に至るまでの合意形成が難しく、お互いに妥協点を見出すことが大変でした。相手の考え方や意見を理解・尊重することは文字にすると簡単ですが、実行は難しく、今でもルワンダでの経験を意識して業務に取り組んでいます。
3点目は専門性と柔軟性の大切さを知ったことです。規模が大きい事務所であれば職員数が多く、一人一人の役割と業務量は比較的明確ですが、ルワンダのような比較的規模が小さい事務所では、予算管理から案件監理まで、一人で多くの業務を担当することがあります。そのため、専門性も重要ですが、どのような業務にもある程度対応できるような柔軟性が重要です。この経験があったからこそ、私は専門分野のみならず、あらゆる分野の業務の知見を増やすようにしています。
少し抽象的ですが、今後も開発途上国の課題解決に寄与しつつ、国際協力の世界で活躍したいと考えています。
この目標を達成する手段として、専門性のみならず、どのような環境・地域でも成果を出せるような適応力も伸ばしています。例えば、私はこれまでJICAや大使館等にて、無償資金協力事業や日本企業の海外展開支援事業に携わってきました。このようなODA(政府開発援助)や企業支援の知識及び経験は、日本の公的機関のみならず、国連でも十分に活用できる経験だと考えています。また、地域については、UNYVではルワンダ、その後はアジアが中心でして、今回はタンザニアに駐在しています。アジア・アフリカという異なる二つの地域を経験できたことで、地域性も広がり、自身の知識を活用できるフィールドが増えています。
キャリア面では、今後も日本のため、そして、世界のために自分の知見や経験を活用したいという気持ちがありますので、社会課題解決に資する事業を実施できる組織で働く予定です。日本の組織であれば、課題解決は勿論ですが、日本の国益、例えば現地での日本のプレゼンス向上のために働きます。一方で国際機関であれば、日本のためではなく事業費を拠出してくださるドナー国、そして現地の課題解決のために働くことになります。その観点では、私にとって組織に入ることはゴールではなく、スタートですので、今後も自身の目標を達成できる組織・仕事に就きたいと思います。
UNYVは留学とは全く異なります。「語学力を上げたい」「異文化に身を置きたい」「就職活動を有利に進めたい」等の理由であれば留学で十分だと思います。
一方で、UNYVはボランティアとはいうものの、国連事務所の一員として、異なる国籍の方々と協力し業務を進め、相手の話に傾聴しつつ、自ら考え発言し、そして成果を残す能力が求められていると個人的に考えます。更に、開発途上国に滞在しますので健康や安全にも注意しなければならず、過酷な環境の中で業務を遂行しなければなりません。やりがいや楽しいことはありますが、それと同じくらい辛いことや苦しいことがあります。そういった経験が出来る唯一無二のプログラムですので、今後、国際機関職員として社会課題解決に貢献したい、あるいは国際協力に携わりたいということであれば、UNYVは何物にも代えられない財産になります。
ただ、UNYVに合格する為には相応の準備が必要でして、私の周囲は受験生のように毎日準備を進めていました。前項で述べた通り、私は1回目の応募で不合格、2回目で合格でしたので、一度失敗しています。しかし、仮にUNYVに参加していなければ、その後さらに国連でインターンすることも、今回の勤務地にタンザニアを選ぶことも無く、そもそも国際協力の仕事をしていなかった可能性もあります。UNYVによって人生の進む方向が決まったといっても過言では無く、合格までの道のりは大変ですが、その努力に見合った価値のあるプログラムです。UNYVが自分に必要なプログラムなのか自問自答し、応募するか決めていただければ幸いです。