大学の授業で観たあるドキュメンタリーをきっかけに環境問題に関心を持ち、「将来はサステナビリティに関わる仕事がしたい」と漠然と考えるようになりました。その後、交換留学先でサステナビリティについて学ぶ中で、大学最後の1年間は、これまでインプットした知識を海外で実践的に活かすアウトプットの機会にしたいと強く思うようになりました。
大学に様々なプログラムがある中でもUNYVに参加したかった理由は、SDGsの基本理念である「誰一人取り残さない(Leave No One Behind)」に向けて、最前線で取り組む国連機関こそ、自分の興味を将来のキャリアに具体化できる場だと考えたからです。また、国連をはじめとする公益団体の利点や課題を自分の目で確かめることで、持続可能な開発における国際的な取り組みの現状を深く理解できるのではないかと感じました。
さらに、実際に国連機関で働く人々がどのような価値観を持ち、どのような思いで仕事に取り組んでいるのかを知ることは、将来のキャリアを考える上で非常に重要だと考えました。同じ目標を共有する仲間とともに学び、挑戦する機会を得られるUNYVは、自分にとって最適な環境であると確信し、参加を決意しました。

大学生にワークショップをする様子
まず、UNYVを通して「自分は何を達成したいのか」を明確にすることが不可欠でした。サステナビリティへの関心を持ったきっかけや経験を整理し、頭の中で散らばっていた考えをまとめ、一貫性を持って言語化することに時間を費やしました。また、派遣候補生になってからは、派遣先機関の取り組みや自分の業務内容を深く理解することに努め、面接に向けた準備を進めました。
さらに、相手に自分を知ってもらうためには、まず「自分が自分のことをよく知ること」がとても重要だと感じ、自己理解に力を注ぎました。自分を客観的に見つめて「自分を深く知ること」は、一般的に優先度が低く見られがちですが、実は非常に大切なことだと思います。相手とのより良いコミュニケーションを築くためだけでなく、自身の活動を無理なく続け、実りあるものにするためにも必要だと考えています。

チームの皆さんとのランチ
一つ目は、派遣されて約1ヶ月後、バンコクで開催された「Asia-Pacific Youth Development Forum」(APYDF) に参加したことです。アジア太平洋各国から起業家や環境活動家の若者が集まるこのイベントは、私にとって初めて自分の「目的」を明確に認識した瞬間でした。普段の業務はオンライン中心で、支援の対象となる若者たちと直接交流する機会は限られていましたが、このイベントで彼らと対面し会話を交わすことで、「自分が取り組む業務は、この人たちのためにあるのだ」と実感しました。その目的さえ忘れなければ、どんな業務も正しく乗り越えられるのでないかと、不思議な自信にも繋がりました。
二つ目は、私が主に携わっていた「Movers」という若者向けワークショップコミュニティにおける日本人の関わりを広げたことです。Moversは英語でのワークショップが中心のため、日本人の参加が少ない現状がありました。そこで、日本人向けに日本語でワークショップを行う「Movers Japan」を促進すると同時に、すでに存在していたアジア太平洋地域のコミュニティに日本人ファシリテーターを連れてくることも目標としました。これは、日本人コミュニティの形成だけでなく、日本人が世界の若者と直接関わる機会を増やすことが、自分なりに日本と世界をつなぐ方法だと考え、また自分の活動期間が終わった後も、その繋がりが続いていく土台を作りたかったからです。その結果、これまでコミュニティにいなかった日本人がファシリテーターとして英語でワークショップを実施して各国の若者と積極的に交流する姿を見ることができ、彼らのおかげで一つ目標を達成できたことに大きな感動を覚えました。

現地で開催されたイベント(APYDF)@UNDP in Asia and the Pacific
当たり前のことですが、誰かと一緒に業務に取り組むのはやはり難しいと実感しました。特に、異なる文化やバックグラウンドを持つ人たちと協力する中で、時間感覚の違いや「当たり前」の基準のズレを感じることが多々ありました。例えば帰国直前に、他のチームが企画している日本でのイベント開催にあたり、人手が足りず日本語での業者対応を頼まれました。しかし、チームからの英語での指示をそのまま日本語に訳すと少し失礼に聞こえたり、日本のビジネス慣習では曖昧すぎて見積もりが取りづらい内容だったりしました。そのため、日本の文脈に合わせつつ、英語の指示と齟齬がないように調整するのが非常に難しかったです。またチーム内で業者への依頼の仕方に認識の違いがあったり、時間が限られていたため連携が上手く取れないこともあり、一つのイベントを作り上げるためのプロセスの多さや、その忙しさを目の当たりにしました。
このような場面で特に気をつけていたのは、どの言語でも、誰を相手にしていても、リスペクトの気持ちを忘れずに、その人との関係を築く努力をすることです。忙しくなると、チーム内の会話が減り雰囲気がピリピリしがちですが、メッセージを明るく返してみたり、感謝の気持ちをその都度伝えたり、状況報告だけでなく「こう言ってみる?」と自分なりの提案を加えて相手の負担を減らすことで、関係を円滑にするよう努めました。そうすることで、文化の違いや感覚のズレに影響されず、その業務を完了させる最善の道を一緒に探れる関係構築ができると学びました。

イベントでタイのパフォーマーさんと一緒に
「大学生があの国連で?」「海外で生活?」このページを訪れた皆さんは、色々な迷いや不安があることと思います。この先輩たちにはできたけど、自分には絶対できない、と思う方もいるかもしれません。ですが、私たち派遣生も、今皆さんの頭の中にあることを派遣前も派遣中も感じてここまで来ましたし、活動を終えた今でも、完全な自信があるわけでは決してありません。きっと大切なのは、自信満々の完璧な人間になる準備でなく、不安の中それでも少し進んでみたいと思う「ワクワク」と、自分なりのベストを追求し続ける「執着心」なのかなと思います。「やってみないと分からない!」を自分に見せつけるために、国際機関でグローバルな挑戦をしてみませんか?みなさんの挑戦を、心から応援しています!!
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《注》国連ユースボランティア派遣生のポジション名は、正式には「国連ユースボランティア」ではなく「国連大学生ボランティア」である。しかし、学内では「国連大学生ボランティア」という表記を使用していないため、国連ユースボランティア事業で派遣を行っている学生の事を「国連ユースボランティア派遣生」、他留学プログラムに合わせる形で国連ユースボランティア事業を「国連ユースボランティアプログラム」と表記する。
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作成したポスター